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Artist Interview – Shotaro HOKARI “Behind the Sun”

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(*Sorry, This article is described in Japanese.)

帆苅祥太郎 Shotaro Hokari
1984年 東京生まれ
東京在住
大学にて彫刻を修学、今年4月には現代美術のアートフェアである「101TOKYO Contemporary Art Fair 2008」にて招待作家として会場エントランス部分に新作立体作品「karma」を展示し、多くの注目を集めその存在を知られることとなった。主なグループ展に「Daugh」(GalleryLUDECO/2005)、「slough-room」(北仲WHITE Polonium/2006)等がある。今回が初の個展。

—–いつ頃から彫刻をはじめたのでしょうか?
芸術系の高校に通ってたので高校生の頃から、ということになりますね。この個展で展示している中だと一番初期の作品は「Untitled」(画像1)ですね。高校を卒業し、大学に入ったあたりで制作しはじめた作品です。

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(画像1)「Untitled」2005 FRP アクリル H44xW26xD85cm

—–初期というのが信じられないぐらい完成されてるのが驚きですね。
この作品はコンセプトが1つはっきりしていて、「距離感」を作りたかったんです。動物のしゃべらないからこそある存在感、訴えかけてくるもの。そしてそこにいる人間との距離感を表現したかったんですよね。保健所に行って処分される予定の犬を見せてもらったりもしました。
—–モチーフが犬という点では「Karma」(画像2)も同じですね。
「Untitled」が完成してから約1年後、この作品をみたコレクターから依頼があり制作したのが「Karma」です。「Untitled」はまったく特定のモデルはいないのですが、逆に「Karma」のモデルはそのコレクターの愛犬。制作工程も結構違いましたね。この作品は101アートフェア(※1)で展示しました。

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(画像2)「Karma」2008 FRP アクリル H110xW210xD50cm

—–それとは対照的に小さい「twins」(画像3)ですが、鳥というよりなんだか色々な形に見えますね。
私が驚いたのは心臓みたいだと言われた事ですね。一度だけ睾丸、男性器の様だとも言われました。実は実際制作していたとき、そういう意識もして作ってたんですよ。でも人に見せてみたら全然その事は言われなかった。だから似てると言われた時そういう意味ですごく驚きました(笑)。
—–思っても口に出しづらかったというのもあるかもしれませんね(笑)。
結局性器も臓器なので。外に露出している臓器というか。性器というのを除いたとしても有機的な感覚はほかの作品にも結構共通しているかもしれません。
—–そうですね。帆苅さんの作品を見て、一番聞かれるのは素材です。FRP(※2)で作ったという印象を受けない方が多いみたいで…
FRPという素材感はできるだけ出さないようにはしています。石や木とは逆にFRPは化学的な素材で形は元から無いものだから、素材の力としては弱い気がするんです。無機質というか…。それをいかに有機的にみせるかというのは彫刻を始めたころからのテーマの一つです。そういった意味だと「twins」は成功しているかもしれません。

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(画像3)「twins」2008 FRP アクリル H22.5xW11xD9.5cm

—–今回の新作「Untitled」(画像4)の素材はwax(※03)ですがそこには何か意図があるんですか?
つねづねFRPは素材として軽い、安い、形も決めやすい、様々な作家が素材として取り入れてきた扱いやすい素材だと思ってるんですが、作る過程で出てくる有害物質というか…正直作るととても体調が悪くなるんですよね(笑)。そういう現状から抜け出したいというかなり即物的な感情からほかの素材を探ってたんです。waxは過去にも小さいものを作る時とか、あと「Appearance」(画像5)を作る時に一部補助的に使ってたんですが、なかなか「作品」のメイン素材としては使用していなかった。waxは熱が上がると溶けて、下がると固まる。当り前のことですが使ってみてなんだかこの有機的な感じが好きになりました。
—–確かに蝋は基本的に自然界で生成される素材ですからね。
あと技術的な面でいうと、今回の「Untitled」を作るに当たってwaxにFRPで使う「タルク」という粉を混ぜて、多少粘土状にして使いました。
これが結構大きくて自分が本当に望んでいた素材に結構近くなった感じがしましたね。このお陰げで今までの「型取り」ではなく、直接素材を盛って成形しながら直感的に制作できました。型取り方法と大きく違うのは、木から枝が生えていくというか、ある形からさらにどんどんと増殖してく感じですね。詳しくないんですが、この方法は仏像の乾漆像(※04)の制作方法に近いのかもしれません。
—–あとどこか、この作品からはホラーというかおどろおどろしい感じを受けますね。これはご自身がモデルなんですよね?
そうですね。ちょうどこの新作をつくる時期はかなり鬱々としていて、それが作品にとても現れたような気がします。とくに人体というのもあって、その時の自分の分身、またはクリーチャーに近いかもしれません。いつも意図してやってるわけじゃないんですが、結局制作時の精神状態は作品に出てしまうんですよね。
—–それが見る人にそれはものすごく伝わってると思います
「リアル」という言葉がありますが、写実的に表現すれば本当にリアルなのかな?という疑問が自分の中にありますね。結局人が人らしくみえる形は頭の中のイメージでしかなくって、自分の中の「リアル」を追及すべきなんだと思ってます。この作品の頭部なんかほぼ頭蓋骨に近い形なんですよね…
—–あと気になったのは台座ですね。台座の素材感の違いは結構評判です。チープさとエッジの鋭さというか
ひとつあるのは、ギャラリーや美術館という作品を見ることが前提の空間に、何かを置いてあったらなんでも作品になってしまうのか、と。そういうことに対しての疑問というかジレンマがもとでホワイトキューブと、木のままの中途半端な台座、白い台座。そういった要素を絡めてみたかったんです。
でも自分の中でまだ整理しきれてないんです。自分にとってはまだ作品としてはまったく完結していない。寧ろ次への布石という気持ちが強いですね。

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(画像4)「Untitled」2008 ミクストメディア H148xW68xD75cm
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(画像5)「Appearance」2006 FRP Wax 鉄 H160xW45xD45cm

—–帆苅さんが提示されたこの展覧会のひとつテーマ「闇からの変容」というのがだんだんつながってきますね。あと展覧会のタイトル「Behind the Sun」に関しても教えていただけますか。
そもそも「Behind the Sun」というのは実は日食をイメージして名付けたんです。タイトルの記号化という意味で制作した「黒い太陽」(画像6)もやはりモチーフは日食です。古くから「天変地異」というような不安的な象徴に使われてきた日食という言葉ですが自分は眩しい世界から一度真っ暗闇になる。その後また光が見えてくるという課程に逆に発展的というか、「今」の象徴という意味でこの言葉を受け止めています。そういう意味の「日食」であり「黒い太陽」なんです。ちなみに「黒い太陽」は素材は新作の「Untitled」と同じWAXで作っています。
—–私は最初から「黒い太陽」はFRPかwaxで作ると聞いていたので違和感はないんですが、初めて見られる方は素材はwaxなんですって言うと驚かれます。絵画か木パネルに着色したものに見えるみたいで…
そうですね。waxを溶かして流し込みで制作しているのですが、型の温度やwaxの温度によって気泡などの現れ方も全然変わってきますので、ぱっと見と違い、かなり有機的な作品なんじゃないかと思います。

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(画像5)「黒い太陽」2008 Wax H82xW82xD2.4cm

—–最後に一言お願いいたします。
初めての個展なんですが、まだ個展をやって自分にどうこう変化があったというのは感じ取れないですね(笑)。後1,2か月するとじわじわ何かあるかもしれません。あとこの個展のために作った新作、そのために選んだWAXとの出会いは実感としてとても楽しかったです。
それから1年前ぐらいから制作は神奈川の橋本の方にあるクンストハウスという17.8年続いてる共同アトリエでやってるのですが、今度その地域のアトリエが集まってオープンアトリエをやるんです。自分も参加する予定なのでよろしければいらしてください。
—–その時はCASHIでも掲載させていただきます。今日はありがとうございました。今後も期待しています。
ありがとうございました。

聞き手・文章:松島英理香

※1 秋葉原で行われたアートフェア 101 TOKYO Contemporary Art Fair 2008に招待作家としてエントランス部分に展示
※2 FRPとは、Fiber Reinforced Plasticsの略で、Fiber=繊維、Reinforced=強化された、Plastics=プラスチックのこと。繊維と樹脂を用いてプラスチックを補強することによって強度を著しく向上したもの。宇宙・航空産業をはじめバイク、自動車、鉄道、建設産業、医療分野等さまざまな分野で用いられている。(Wikipediaより)
※03 蝋のこと
※04 東洋における彫像制作の技法の1つで、麻布を漆で張り重ねたり、漆と木粉を練り合わせたものを盛り上げて像を形づくる方法。