「正規表現」宮田聡志・三輪彩子
左:三輪彩子 ≪無題≫ (installation view) 2013, photo by Ai NAKAGAWA
右:宮田聡志 ≪Rain Leak≫2011, H1800xW900mm, 鉄
「正規表現」
2015年3月7日(土) – 4月26日(日)
出展作家:宮田聡志、三輪彩子
レセプションパーティー : 2015年3月7日(土) 18:00-20:00
* 一部展示替え
前半:3月7日(土)~ 3月29日(日)
後半:4月2日(木)~ 4月26日(日)
この度CASHIでは2015年3月7日(土)から4月26日(日)まで、宮田聡志・三輪彩子による2人展を行います。
宮田聡志と三輪彩子は、共に「物質感」をキーワードに読み解くことのできる若手作家です。
宮田は鉄板やコンクリートブロック、感熱紙や古紙、マスキングテープ等の日用品を用い、主に平面作品やインスタレーションを制作しています。
物質や素材に対しての宮田の真摯な探求において、一貫したテーマとして現れているのは、「消失」「不可視の存在」「侵食と変容」といったことばで表すことができます。物質の変容や朽ちていく姿そのものを内包した彼の作品には、現実の世界がごくシンプルに表現されています。
三輪も様々な木材やモルタル、洗剤といった素材を用い、インスタレーションやオブジェを制作しています。三輪の作品はその大きさや形状から「ポストもの派」を彷彿とさせるものが多く、また、近年『北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI ―交錯する現在―』で発表した洗剤『ブルーダイヤ』を用いた作品など、視覚以外の五感にも訴えてくるほどの圧倒的な物質感が特徴です。2008年に開催された『GEISAI#11』では、ブース制限体積いっぱいに木材や糸を構成し、見事マーク・オリヴィエ・ウォラー賞を受賞しました。また、本年2015年の群馬青年ビエンナーレにて入選を果たしております。
本展覧会は新旧作を織り交ぜ、一部展示替えを挟み前半と後半にて構成いたします。
タイトルの「正規表現」とはプログラミング用語の一つであり、端的に言えば「複数の文字列を、ある一つの文字列として表記する方法」です。
主に文字列の検索・置換を行うときに利用される表記法で、通常の文字とメタキャラクタと呼ばれる特別な意味を持った記号を組み合わせて表記します。
この組み合わせによって文字列を直接指定せず、文字列の「特徴」(パターン)を指定することができるため、表記の揺れを吸収して検索を行ったり、電話番号やメールアドレスなどといった一定の規則を持った複数の異なる文字列を一括して検索・置換したりすることができます。
正規表現の起源は、1940年代に神経生理学者たちが人の神経系がどのように機能しているかを研究していたころに遡ると言われています。1956年、数学者であるクリーネ(Stephen Cole Kleene)が『Representation of Events in Nerve Nets』という論文を著述し、そこで初めて正規表現の概念を紹介しました。ここで「正則集合の代数 (the algebra of regular sets)」を説明するのに使用された式 (expression) が「正規表現 (regular expression)」であり、現在の呼び名もこれに由来しています。
現在では広く様々なソフトウェアに実装されており、テキストベースのエディタや検索ツールにおいて重要な役割を担い続けています。
コーディングに携わる方で無くとも、テキストエディタやエクセルなどの表計算ソフトで正規表現を使用したことのある方は少なく無いと思います。
不可解な文字列に内包された複数のルールは、「正規表現」という名称も相まってまるで美しいルールを内包した美術作品のようとも言えます。
美術作品とは、総じてこの世の内外にある様々な素材を「作家」という美しいルールを持つプログラムが選び、それを通して再構築された結果ではないでしょうか。特にインスタレーションという分野は作品たらしめる要素が多岐にわたり、難しくも興味深い分野です。
現代美術における「正規の表現」とはなんでしょうか。簡単には答えの出ない問いであることは自明ですが、その作品が少なくともひとつの「正規表現」であるという責任を引き受けた上で「表現」ということばを選びとっているという自覚を持つ作家をこそ、弊廊で紹介したい作家であると言えます。
7日のレセプションパーティには作家も在廊いたします。弊廊の考える”正規”のインスタレーションを、是非この機会にご高覧、ご紹介賜りたく、ここにご案内申し上げます。
参考:
前田裕哉「三輪彩子論 常に新しい出会いのために」『北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI ―交錯する現在―』北加賀屋クロッシング実行委員会、2014年、pp.058-060
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