國分莉佐子個展「オプティカル・ストライク」
國分莉佐子《郷愁の海へ》2025 Photo by Hana Yamamoto
「オプティカル・ストライク」
2025年5月16日(金) – 6月14日(土)
出展作家:國分莉佐子
この度CASHIでは、國分莉佐子個展「オプティカル・ストライク」を開催いたします。
國分(1999年、東京都生まれ)は、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻に在籍中の新鋭作家です。幼少期の知覚体験やゲーム画面に触れたときの感覚を抽象化し、筆致を思わせるフォルムや鮮烈な色彩で描き出す絵画作品を制作しています。これまでに、個展「天穹のスパークル」(2025年、Gallery & Restaurant 舞台裏、東京)や、グループ展「sandbox」(2024年、CASHI、東京)に参加し、注目を集めてきました。
本展「オプティカル・ストライク」では、國分が幼少期に体験したニンテンドーDSiウェア『うごくメモ帳』(通称『うごメモ』)にまつわる視覚的衝撃や、そこで生まれたコミュニケーションの感覚をテーマに、國分が新たに取り組んだ絵画作品を発表いたします。
2004年に任天堂が発売した携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」は、二画面とタッチパネルを備えた画期的なデバイスとして、子どもから大人まで幅広い層に親しまれました。放課後に公園でDSを持ち寄る小学生や、通勤電車で遊ぶ大人の姿も珍しくなく、その後もDS Lite、DSi、3DSなどのバリエーションを経て、10年以上にわたり一時代を築いたゲーム機です。
『うごくメモ帳』は、そのDSi向けに2008年から配信されたアプリケーションです。付属のタッチペンを使って手描きのアニメーション(フリップブック)を作成できるだけでなく、その作品を投稿する機能も備えており、ユーザー同士が創作を通じて交流できる場として親しまれました。株式会社はてなが提供する外部サービス『うごメモはてな』では、ランキングやカテゴリごとにメモを見ることができ、インターネットブラウザーを搭載している様々な端末からアクセスできたため、子どもだけでなく大人の閲覧者も多く、人気のメモは『ニコニコ動画』に転載されることもありました。
画面上で線が走り、コマが動き出す感覚は、「描く」「動かす」「見せる」といった行為をすべて掌の中で完結させる体験として、多くの子どもたちに強い印象を残しました。現在もなお、海外ファンによるアーカイブ活動や復刻プロジェクトが続いており、このプラットフォームを原点とするアニメーターやイラストレーターも多数輩出されています。
國分は本展で、そうした原初的な映像体験や感覚の記憶にあらためて向き合い、その閃光のような瞬間を絵画の中に定着させています。ぜひ会場でご高覧ください。